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鮫島病院 院長 鮫島隆志 先生

鮫島隆志先生
プロフィール
鮫島病院 院長
  • 鮫島病院勤務
  • 日本外科学会専門医
  • 日本大腸肛門病学会指導医・専門医
  • 日本消化器外科学会認定医
鮫島病院
〒892-0846
鹿児島県鹿児島市加治屋町9-8

初期症状では市販薬で様子を見てもOK

痔核(いぼ痔)や脱肛が大きくなってくると、便が出て直腸が空っぽなのに、その膨らみのために残便感を感じることがあります。ただ、こういったケースは市販薬で様子を見ても良いでしょう。痔核が腫れるのは、血のめぐりが悪くなる循環障害ですから、薬で血のめぐりが良くなれば腫れが引いていき、軽い脱肛や残便感が解消されることもあります。
裂肛(きれ痔)については、最初は自分では気づかない程度です。ちょっと切れている、ちょっと出血する程度の時は市販薬が有効です。ただこの場合、傷が治ろうとしている時にまた次の便が来ますから、治りきらないまま再度切れる、それを繰り返すと、慢性裂肛になってしまいますので注意が必要です。

出血と脱肛は、早めの受診を

「出血」「脱肛」という二つの症状は病院に行った方が良いでしょう。痔核(いぼ痔)や脱肛による残便感は、市販薬で改善できることがありますが、薬を使うのをやめた途端にまた残便感を感じたり、お通じの際に脱肛してしまった場合は、市販薬では手に負えませんので病院で対処する必要があります。
また、裂肛(きれ痔)も軽いうちは市販薬が有効ですが、傷が治りきらないまま、また切れてを繰り返すと、慢性裂肛になってしまいます。こうなると痛みが長引き、ひどい人ならお通じの後1日中痛いといった状況が続きます。こうなれば受診してほしいですね。まれにですが、慢性裂肛がひどくなって潰瘍(かいよう)になり、その深い傷から細菌が侵入して膿瘍(のうよう)ができてしまうこともありますので、侮ってはいけません。

出血と脱肛は、早めの受診を

血のめぐりが良い肛門周辺のがんは転移しやすい

出血や痛みを訴えて来られるケースで、一番怖いのはがんです。消化管の下端である肛門管は知覚神経がものすごく発達しており、小さくても痛みを感じます。反対に、腸と肛門の境目より内側は、痛みを感じる神経が無いので痛くなく、痔核(いぼ痔)ができてもわからないことがあります。直腸・肛門周辺は「第二の心臓」と言われる程、血のめぐりが良い場所で、そこにがんができれば、例え小さくても、がん細胞が血流やリンパの流れに乗って脳や肺、周囲のリンパ節に運ばれてしまいます。「おしりが痛い」と診察に来られた方は、常にがんの疑いを持って診察しています。「痔で死ぬことはないが、がんでは死ぬことがある」と、肝に銘じておいてください。
他にはがん以外でも、潰瘍(かいよう)性大腸炎、クローン病といった大腸の病気も考えられますので、出血があればまずは病院を受診されることをお勧めします。

肛門への負担を可能な限り取り除く

痔の原因は、すべからく肛門に対する負担ですから、便秘や下痢はもちろん、仕事で座りっぱなしになるなどの負担も原因になります。例えば40代の頃は、痔核(いぼ痔)が飛び出ていてずっと指で押し込んでいた人が、仕事を引退したら出てこなくなったというケースもあります。仕事をしている時にかかっていた、おしりに対する負担がなくなってきたので、いぼ痔が腫れなくなったのでしょう。外科的処置が不要になり、お薬で十分治るということはあります。便通だけでなく、考えられる原因は可能な限り取り除いた方が、痔の予防になるでしょう。

女性ならではの視点での診察が可能な「女性外来」

当院も女性スタッフだけの「女性外来」を行っており、評価をいただいています。女性の場合は、肛門からの出血が、実は腟からのものだったり、血尿だと思っていたら肛門からだったりするケースもありますので、女性ならではの視点で診察することは非常に有効だと思います。指診の際、女性の医師は男性の医師に比べて指が細くて優しいので、痛みが少ないことも人気の理由かも知れません。また、女性の場合は出産も控えていますから、治療の際には未婚・既婚も重要になります。妊娠しておなかが大きくなるとそれだけでおしりに負担はかかりますし、出産の時に痔核(いぼ痔)を抱えていると赤ちゃんと一緒に脱肛してしまいます。そういう方は、次の妊娠を計画する前に治した方がいい、というお話もしています。

予防から手術まで、高齢者への対応

痔の予防については、バランスのとれた食事が大切ですが、だからと言って毎日お通じがあるとは限りません。高齢者の方は若い頃の感覚でいるのですが、歳を取って食事の量が少なくなると、便も少なく、間隔が空くのは自然なことです。腸の動き、体の動きなどが衰えていくわけですから。バランスのとれた食事をとっていても便秘をするという方には、「便秘ではなく、今はそういう体になっているのですよ」とお伝えします。こうした指導も患者教育という点では重要なことです。
また、高齢で肛門がゆるくなっている方には、手術の際に、少し細目に仕上がるようにしてあげるなど、年齢に応じた治療をしてあげる工夫も大切です。

痔ろうは経験の浅い医師ではわからないケースも

痔ろうの初期段階は、おしりのまわりに膿がたまる状態です。「肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)」というものですが、これはかなりの激痛です。熱っぽかったり、腫れている時は、我慢せず早めに病院へ行ってください。ただその際に注意していただきたいのが、特に奥にできてしまうケースです。内科の医師や経験の浅い医師であれば、表面上だけ診て見つけられない場合があり、原因もわからないまま抗生剤などを処方されるということになりかねません。そうしている間にも、病気はどんどん進行します。おかしいと思ったら専門病院へのセカンドオピニオンを検討しましょう。患者さんは肛門科に恥ずかしさを押して来院されるのですから、医師もそれなりの診察をするべきであり、そうした病院を選ぶことが大切です。

痔ろうは経験の浅い医師ではわからないケースも

投薬で2週間から1ヵ月程度、良くならない場合は手術へ

患者さんの症状によって治療はケースバイケースですが、通常の痔核(いぼ痔)であれば診察後、最初は2週間の投薬を行い、薬の効用をみます。ここで良くなる方の中には2週間で終わる方もいらっしゃいますが、良くなってはいるけどもう少し治療が必要な場合は、さらに1ヵ月程度投薬を続けて様子を見ます。この治療で費用は、大体3万〜4万円。期間としては、初診から治療が終わるまで1ヵ月半ぐらいです。それでも良くならない場合は、他の検査をお勧めしたり、手術を考えていただくことになります。

スタンダードな結紮(けっさつ)切除術で、入院期間は基本10日間

当院の統計では、初診で痔核(いぼ痔)と診断され、手術をされる患者さんはおよそ25%です。結紮(けっさつ)切除術というスタンダードな方法で入院期間は基本的には10日間。ただし、当院は鹿児島という土地柄、すぐに病院に来ることができない離島の方も多いので、そのような方は危険な時期が過ぎるまで少し長めに入院していただきます。全体としては、平均すると12日間程度でしょうか。手術の方法や器具は年々進化しており、以前に比べると安全性も上がり、時間もかなり短縮されました。現在は、「ALTA注射」と呼ばれる硬化療法も広まっています。外痔核を切り、内痔核を注射で固める方法ですが、切る範囲が半分になるので、都心部ではこの術式で日帰り手術をしているところも多いですね。

軽い痛みや出血は薬で、ひどい痛みが長く続く場合はすぐに病院へ

裂肛(きれ痔)の場合は、当院では約30%の方が手術されています。裂肛については、初期に少し出血する程度の時は、市販薬が有効ですが、傷が治りきらないまま次の便が来て、また切れることもしばしば。それを繰り返していると慢性裂肛になってしまいます。こうなってしまうと、長く痛みが続きます。ひどい人はお通じの後1日中痛いこともありますから、こういう状況になれば必ず受診してください。慢性裂肛の場合、早めに受診すれば、根治手術の前の段階でも、100の力で閉まっていた肛門を70〜80の力にして、便をスムーズに出す括約筋切開術や、指を使って肛門を拡げるという日帰りで可能な手術で対処できます。だたし、これにはノウハウが必要ですので、必ず肛門科専門医を受診してください。

痔ろうは10年以上放置すると「がん」になるケースも

痔ろうは、おしりのまわりに膿がたまる「肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)」が原因で起こりますが、これは肛門と直腸の間にある小さな穴に細菌が入り、炎症を起こすことが原因です。裂肛(きれ痔)がひどくなって潰瘍(かいよう)になり、その深い傷から菌が入って膿瘍(のうよう)ができるケースもあります。これが進行すると、肛門と肛門周囲の皮膚に膿を出すためのトンネルができ、痔ろうになります。ひどくなると皮膚にできた穴から膿が出続けます。ただこの状態になると、下着は汚れますが膿が溜まらないので痛みはありません。しかし放置するのは危険。痔ろうは10年以上放置し、がん化した例があります。定年退職後に、ゆっくり治そうと放っておいた結果、がんになっていたということもありますので、放置せず、必ず病院に行ってください。

痔ろうは10年以上放置すると「がん」になるケースも

口コミサイトでも好評な女性外来

現在は、肛門科に限らず女性外来が増えており、当院でも実施しています。それを知って来院されるケースもありますし、何も知らずにおいでになっても、女性外来があることを知れば、そちらを選択される女性がほとんどです。周囲では、数少ない肛門科の女性医師ということで、マスメディアがよく取り上げてくれることもあり、認知は広まってきていると思います。インターネットの口コミサイトなどでも高い評価をいただいています。現在当院では、予約制で女性の医師が診察する形を取っていますが、入り口から男女を分けている病院も出てきています。建物の関係上、当院では男女を分けることはできませんが、より女性が来院しやすい環境を整えていく予定です。

手術後は、大丈夫な出血と危険な出血を見極めることが大切

手術後、最も気を付けないといけないのは「痛み」と「出血」です。痛みについては、薬が進化していますので抑えられます。問題は出血です。最も不安な術後の最初の排便については、緩下剤を出して便通を良くしますが、傷口を便が通るのですから、術後1週間〜10日間は必ず出血があります。しかし、いつまでも止まらないものや、血の塊が直腸に溜まって一気に出たりする場合は危険なので、止血処置が必要です。患者さんには「術後はわずかな出血は必ずあること」を伝えた上で、大丈夫な出血と危険な出血を見極められるよう、写真を見せてしっかり説明します。看護師にも、出血の見極めに関しては、しっかり把握してもらっています。

便失禁も肛門周辺の病気を引き起こす原因に

便失禁でも痔を引き起こす可能性はあります。皮膚は弱酸性で、腸液は比較的強いアルカリ性のため、便が長時間皮膚に接触すると、肛門や周囲の皮膚などがただれてしまいます。この場合は、痛みもひどくなるので注意が必要です。また便失禁は、肛門の疾患が原因の場合もあれば、肛門に何もなくても起きる場合がありますので、見極めて治療しなければなりません。後者の場合は、直腸と肛門の運動のバランスがとれていない機能的な問題ですが、起きている間に起こる方にはいろんな手立てがあります。重症なのは寝ている間に失禁してしまう方です。こうした方には、内服薬やリハビリなどで保存療法を行い、それでも効果がない場合は、「仙骨神経刺激療法」を行います。これは臀部に機械を埋め込んで、仙骨神経を電気で刺激することで失禁を抑える方法で、日本では2014年に保険適用されました。

バランスの良い食事が大事。年齢による体の変化も考慮した判断を

食物繊維は、便のかさを増やすので便通にはとても良い食材です。ただ、偏ってしまってはダメ。バランスのとれた食事をとることが重要です。腸に良いからと言って、食べ過ぎ、飲み過ぎはいけません。また、高齢の方で便の量や回数が減ったことを便秘だと気にされる方がおられますが、これは心配する必要はありません。若い頃の感覚のままの方が多いのですが、歳をとると食べる量が少なくなるので、当然便も少なくなります。排便の間隔が空くこともあるでしょう。大腸の検査で異常はなく、バランスのとれた食事をとっていても、便秘だと心配されている高齢の方には、「便秘ではなく、今はそういう体になっているのですよ」とお伝えします。患者さんには、こうした指導も大事なことです。

バランスの良い食事が大事。年齢による体の変化も考慮した判断を
この記事の監修医師
鮫島 隆志先生

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